コースを間違えていると気付いたのはいつだったのだろうか?
イヤ、薄々は気が付いていたのですが、戻る勇気が無かったんです。
これで違っていたら、確実に表彰台は無くなるよなって。
そんな中で決定的な出来事がありまして。
すれ違ったカップルのハイカーの方に「私が通る前に誰か来ましたかと」
「いいえ、見てないわ。」
・・・やっぱりなと。
とにかく最後のチェックポイントまで戻ってみようと思ったのですが、混乱していたのか、戻れない。
ここは何処だ。イヤ、スイスの山の中だ。そして周りには巨大な牛さんしかいない。
ドイツ語で表記されたトレイルの表示を見るが全く分からない。
流石にパニックになりました。
とにかく、周りの状況を見ながらトレイルを進むしかない。留まっていたら、日が暮れる。
しばらく走っていたら、何軒か民家らしき建物が見えました。
道を聞けそうだ!と思い、必死で走りました。
ノックをしてみると・・・人が出てきてくれました。
年齢は40代位の男性だったと思いますが、流石に驚いたと思います。
誰かと思って出てみたら、見なれない格好をした東洋人が立っているのですからね・・・。
「私は、トレイルランニングのレースを走っています。しかし、道に迷ってしまいました。ここは何処ですか?」
とオフィシャルから配布された地図を広げて見てもらいました。
タブン、自分が落ち着きを失っていた様に見えていたと思います。っていうか相当、パニックになっていたと思います。
その人は「落ち着け。暖かい牛乳でも飲むか?」
と言ってくれたのですが、余裕の全くない自分はそれを聞いた瞬間「(・・・??何を言ってるんだ)早く道を教えてくれ」
そんな最悪な受け答えをしてくれたにも関わらず再度「落ち着けよ。」と言ってくれ、暖かい牛乳を持ってきてくれました。
(・・・何やってんだ、俺。見も知らない東洋人に優しくしてくれたのにその言い方はないだろう)
牛乳を飲みながら、カナリ凹みました。
現在位置もチェックポイントまでの道順も教えてくれ、半泣きになりながらお礼を言って出発。
そして何とか最終チェックポイントまで戻ってこられました。
チェックポイントのテントの真裏から自分が戻ってきたので、スタッフの方が驚いて「・・・何をやっているんだ。どうして、戻ってきたんだ?」
「道に迷って、戻ってきたんだ。リタイヤしようかと思っているんです」
「何言ってるんだ、まだここに来てない人も沢山いるんだ。それに君はまだ9位だぞ」
それでも自分がどうしようか悩んでいると「ヨシ、来い!」と。
何処へ行くのかと取りあえず着いて行くと「乗れ!」
「迷った所まで俺が連れて行ってやる!」
へ??
クルマで・・・ブーンと。
(これってアリなのか?コレはトレイルランニングのレースだよな??クルマ乗っていいのか??イヤ、いいのか。オフィシャルのスタッフがやるからいいのか???)
?マークが星の数ほど並びましたが、自分が間違えた箇所に到着。
沢山の人にそこまでしてもらっていたのに、ゴールまでの道のりは、本当に苦しみでしかありませんでした。
何で走っているんだ、俺。表彰台も逃したのに走る意味があるのか?って。
今、思えば、なんて情けない状態だったんだ。スイスまで来て、このレースに参加した本当の意義を忘れていました。
情けなく、灰になった状態でゴールへ辿りつきました。
そんな自分を迎えてくれたのは、何と途中まで一緒にパックになって走ってくれていた二人が待っていました。
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